56歳女無情に見えた夫が私の前で初めて泣いた

50代後半 女   娘一人と夫との3人家族です

5年前ほどのこと、私は原因の分からない病にり患し、家事も自分の身の回りのこともできず、寝たきりの毎日を送っていました。鎮痛剤も効かない下腹部の激痛で眠ることもできず、身体を横たえるといっそう、痛みがひどくなるので、ソファに座ったまま、一日を過ごすというありさまでした。さまざまな病院で検査も受けましたが、医師は首をひねるばかりでした。更年期障害だろうと、市販されているのと同じ顆粒の漢方薬を大量処方されるばかりで、症状は治癒するどころか一層悪化していくばかりです。自分なりにネットで調べると、ある難病指定の病名が浮かび上がってきます。「間質性膀胱炎」、それが私の病気なのだろうと見当がついてきました。その病気に詳しい医師がいるということで、紹介状をたずさえて、夫が有給休暇をとり、連れて行ってくれました。大変込み合っている病院で、体力や気力のなくなっている私には、どのように行動して受診までたどりついたらよいか分かりません。夫がいなかったら、診察を受けるのもあきらめてすぐに自宅に帰ってしまっていたでしょう。やっと、自分の診察の順番がまわって、医師と相対しました。紹介状をみるなり、「間質性膀胱炎の疑いが強い。診断を確定させるためにも膀胱拡張手術をうけるべし」とのことです。私の脳内はやはりという気持ちと、治らない病気には何をしても無駄だという捨て鉢な気持ちが交錯し、しばらく沈黙した時間が流れました。医師はいらいらしたようで「私の診断に何か疑問があるんですか!いっぱい患者さんが待っているんですよ。早く決断してください」と怒ったように言い放ちます。「しばらく、考えます」と椅子からゆっくりと私は立ち上がり、支払いを済ませ、病院外に出ました。ひどく雨が降っていました。自宅に帰り、そのまま布団に倒れ込みました。この痛みを一生背負って私は生きていかなければいけないことに、絶望です。何もかも忘れ、考えることをやめたいと睡眠薬を多めに飲んで眠り込んでしまいました。次の日の朝、激痛で、また起きてしまいました。もう、私は痛みのない人生に戻ることはないのだという思いだけが頭のなかを駆け巡っています。「死んでしまおうか」そうすれば、この苦しみから解放されると考えました。お酒を口に入れ、睡眠薬をもっともっと飲めば、楽になれるのだろうと、手のひらに薬を出しながら、すこしずつ飲んでいきました。ふと遠くで、玄関扉の開く音がしました。まだ、お昼です。家族は仕事をしている時間です。いきなり、真っ青な顔をした夫が走り込んでくるのが見えました。
初めて子供が生まれても、会いにもきてくれず仕事優先だった人です。姑や舅が危篤中でも仕事に出向いていくほど情のない男だと思っていました。過去に姑とのトラブルで離婚騒動になっても、私の味方はしてくれませんでした。そんな人が仕事を放り出して自宅に帰ってくるとは思いも寄りませんでした。夫は私のくすりビンを取り上げると、何も言わずただただ二人で泣きました。辛いときも楽しいときも長く一緒に暮らしてきただけ絆は強くなっていくのでしょうか。